花咲の家
外観、玄関、部屋、光、更地になった土地、道、そして家族の家を取り巻いていた物理的な風景。
家族のアーカイブは、すべての画像が同じ種類の仕事をしているふりをしてはならない。 記録するものがある。思い出すものがある。証拠になるものがある。探しているものがある。 暗かったものを見えるようにするものがある。そして、その章々を通ってきてはじめて、 何を言っていたのかがわかるようになる画像もある。 だからこの画廊は、ただ山のように積み上げるのではなく、部屋の連なりとして並べられている。
土台から入りたいなら、家と蔵から始めればよい。扱うこと、価値、選ぶことの圧を感じたいなら、品々の頁へ進めばよい。 神社と墓の頁へ入れば、継承がその土地の場の中でどんな重さを持つかが見えてくる。 旅立ちの頁を追えば、動くことの痛みが出てくる。富山と京都へ進めば、場所は重荷より広くなっていく。 そして最後に、AI と想像の頁へ入れば、記録だったはずのものが、いつのまにか夢を見るようになる。
外観、玄関、部屋、光、更地になった土地、道、そして家族の家を取り巻いていた物理的な風景。
鳥居、石標、石の像、墓、蔵。家のまわりにあった聖なる場と受け継がれた場。
欄間、箪笥、屏風、器、酒器、人形、香炉、掛け軸、そして保たれてきたものの静かな権威。
宅急便、梱包された品々、歩道、列車のデッキ、モノレール、羽田、そして先へ運ぶことの硬く美しい所作。
運河の光、城の反射、屋台、食堂の看板、駅の天気、湯、そして帰ってくることの美しさ。
門、墓地、金閣、路地、工房、神社、酒場。入っていくことのために整えられた、もうひとつの建築。
Bar Mitchell、Studio Nin、鍛造、手裏剣、ウイスキー、レコード、看板。夜の都にある選ばれた部屋。
六曲屏風、想像上の屋敷、再構成された室内、そしてアーカイブが記録を越えて夢を見はじめる場所。
まず読むこと。そのあとで、見ること。 アーカイブは、章がすでに画像に圧、順序、記憶を与えたあとで、いっそう強く働く。 けれど反対向きに入ってもよい。最初に画廊へ入り、画像のほうに、 自分がどの部屋の物語へ入る準備ができているのかを教えてもらってもよい。
よいアーカイブは、すべてを同じ重さに平らにならしてしまわない。 ある画像は部屋であり、ある画像は戸口であり、ある画像は重荷であり、ある画像は安堵であり、 ある画像は witness、そこにいた証人になるのだと、読者にわからせる。 頁が分けられているのは、そのためである。物語をばらばらにするためではない。 物語が、ちゃんと呼吸できるようにするためである。
* * *
家、道、神社、駅、湯、街、金、木、旅立ち、そして想像の残像。 それらはもう、ここに属している。
アーカイブは、物語のあとに残ったものではない。
物語がこれからも入りつづけられる、そのひとつの方法である。